特許事務所ってどんな感じ?

ほぼ全員(弁理士、事務員など)が、黙々と個人のパソコンに向かって仕事しています。基本的に静かな職場環境です。

弁理士については、クライアントからの電話・打ち合わせ、事務所員からの相談などもありますので、弁理士はこれらの対応に追われてバタバタしている場合もあります。また、事務所員同士で仕事の相談や会議も当然あります。隣席同士であったり打ち合わせスペースであったりと。

したがって、事務所内が一日中シーンとしていることはないですが、みんながみんな打ち合わせや電話対応ばかりをしているわけではないので、やはり静かな職場と言えます。他の職業と比べて話す機会は少ないと思います。 さすがに一日中一言もしゃべらないというのはないですが、午前中はひと言も話さないということはたまにあります。

俺/私は、シーンとしているところは苦手、しゃべらないとムリという人、意外とそんなことはないです。特許事務所に働く人の半分以上は(おしゃべりが好きな)女性ですが、みなさん苦もなく普通に働いています。むしろ静かで仕事に集中しやすい環境であって、作業も個人ワークなので、さっさと自分の持ち分の仕事を集中して終わらせて早く帰宅しようと頑張っている方々が多いようです。

ただし、昼休みなんかは女性同士でこれでもかってぐらいに話したりしています。もちろん休憩室などでおしゃべりすることもあります。パソコンに向かってキーボードを打っていると、たまにどこかで相談や電話などの話し声がするという静かな環境だと思ってくださればいいと思います。


特許事務所の良いところ

 ■ 転勤がない!

そもそも職場は一つしかないから当然といえば当然です。複数の支部を持つ大事務所もありますが、支部ごとに現地採用するので異なる支部に転勤することは、本人が希望しない限りまずありません。
一方、大企業ではマイホームを購入したら遠くに転勤させられたという悲しい体験談を良く耳にします。しかし、特許事務所ではそんな話は皆無です。安心してマイホームを購入できます。

 ■ 都会で働ける!

東京、大阪、名古屋などの大都会に特許事務所は集中しています。きれいなオフィス街にあることが多いです。逆に、静かな田舎で働きたいという希望をかなえることの方が難しいです。

 ■ 美人やおしゃれな子が多い!

まず第1に、特許事務所は女性比率が高いです。個人事務所などを除いて、一般的に50%以上は女性です。また、結婚すると辞める方も数多くいますので、若い女性の比率が高くなります。

第2に、特許事務所は都会にあり、都会に通勤する以上人目が多く、当然の事ながら服装や化粧に気を使います。

第3に、所長の独断で採用者を決定することが可能です。所長が女性の顔を重要視する方ですと、その事務所では美人率が格段に上がります。

これらの要因からかわいい子やおしゃれな子が多いです。特に男性社会と言われる法律業界で、ここまで女性比率が高くしかもすぐ近く(同じ居室)にいるのは珍しい職場だと思います。逆に大企業の研究部門では、実力重視であり顔で選ぶことが知れると世間から批判を受けるので、美人率は低いと思います。また、研究者は仕事上服装や化粧に力を入れにくい環境なのも美人が増えない一因だと思います。

 ■ 自分でスケジュール管理!

仕事は基本的に個人ワークになりますので、与えられた仕事を期限内にこなせば文句は言われません。したがって例えば、明日は飲み会で定時に帰りたいから明日の分まで今夜は遅くまで働こう。今週は土日出勤して来週長期で旅行に出かけよう。などが可能となります。もちろん仕事を早くこなせばその分、早く帰れます。

 ■ フレックス採用が多い!

上述した通り、仕事は個人ワークですので、フレックスを採用しているところが多くなります。もちろん、コアタイム(10~16時とか)などは存在しますが、それでも通常よりも遅い時間で出勤が可能です。寝坊さんにはうれしい限りです。パートナー(共同経営者)クラスになると、完全フレックスを採用するところが出てきます。コアタイムもなくなり、自由気ままです。私の経験ですと、私の隣席の人が完全フレックスのようで、相談したくても毎日いつ出勤するか全く読めなくて困るということもあります。

 ■ 先生と呼ばれます!

弁理士になればクライアントから先生と呼ばれます。かなり年配のクライアントからでも先生と呼ばれます(ただし、本心から先生と言われているかどうか別ですが…)。たとえ20代でも、特許事務所1年目の新人でも、弁理士である以上、先生です。はじめのうちは恐縮してしまいますが、だんだん慣れてきます。先生扱いされると、それに見合った実力を持たなければならないと自覚するので自然としっかりしていきます。特許事務所は企業の下請け(特許明細書作成の代行)としての役割を担いますが、普通の下請けとは違い、クライアント側が弁理士の意見を尊重してくれますので仕事はやりやすい方です。実力が伴い、クライアントに本心から先生と言われるようになれるよう頑張ってください。

 ■ 実力主義!

一人前になると、給料は完全に実力主義です。 売上(どれだけ特許明細書を書くか)によって給料が変わります。 したがって、同僚間の差で理不尽な査定が少ないです。「あいつは、俺よりも仕事ができない癖に給料を多くもらいやがって…」みたいなことはあまりありません。自分が同僚よりも多く売上があれば、同僚よりも給料が多くなります。勤務時間や残業時間などもあまり関係ありません。勤務時間や残業時間が少なくても、短時間で効率的に特許明細書を書いて売上が良ければ給料は良くなります。逆に、いくら残業をしても売上が悪ければ給料は低いです。企業であれば上司へのごますり、口だけが達者などの実力以外の要因でボーナスなどの査定が変わり、真に実力がある人間が正当に評価されないなどの不満が出てきますが、特許事務所ではそのような不満は少ないと思います。(ただし、所長がもらい過ぎ所員から搾取し過ぎなどの所長に対する不満は存在しますが…)

 ■ 事務所内での対人ストレスが少ない

一人前になりますと、「クライアントから依頼 →(必要に応じて、担当者がクライアントと直接打ち合わせ)→ 特許明細書を一人で作成する → クライアントに納品する」という流れになります。企業みたいに、グループで相談しながら仕事を進めていくという性質の仕事ではありません。よって同僚や上司との接触や会議は少なくなりますので、事務所内の対人的なストレスが一般的な企業よりも少なくなる傾向です。


特許事務所の悪いところ

 ■ 新人のうちは我慢!

一人前の特許明細書書きになるのに数年は必要ですし、初めは本当に分からないことだらけです。上司に怒られることもしょっちゅうです。大企業みたいに優しく丁寧に教えてくれるようなシステムが整った事務所は少ないです。そもそも、特許明細書作成マニュアルなんかありません。(ちまたで販売している特許明細書の作成の本は一般論を書いたものであって、知識として役には立ちますがそれだけで明細書が書けるようには絶対になりません。)
特許明細書作成はずばり経験です。自らの手で書き上げた特許明細書の数だけ上達します。

「上司が過去に書いた類似案件の特許明細書を参考にして、見よう見まねで特許明細書を一通り書いてみて上司に持っていく。上司によって赤ペンで修正・やり直しさせられる。修正したものを上司に持っていく。赤ペンで修正・やり直しさせられる。この作業を繰り返して1本の特許明細書をようやく完成させる。」

このようにして苦労して特許明細書を完成させるたびに少しずつ上達していきます。上達するにつれて上司による修正は少なくなりますし、明細書作成スピードも上がります。そうすると一月あたりの明細書作成本数は増え給料も良くなります。また、明細書作成に対するストレスもずいぶん軽減されます。

 ■ 期限は絶対です!

この仕事は期限が絶対の仕事です。どんな完璧な内容の仕事をしても、期限が一日でも遅れればすべてがパァになる場合があります。期限には非常にシビアな仕事です。期限に追われる仕事といっても良いでしょう。

 ■ 細かい文章作業!

文書を作成していく仕事ですが、緻密な論理に基づいて文書を作成していかなければなりません。適切な文言・用語、さらには文字一つ一つに非常に気を使います。誤字や脱字をするだけでも、クライアントの評価が一気に下がったりします。文章の作成やチェックにおいて細心の注意が求められます。

 ■ デスクワーク!

基本的にデスクワークです。外出せずに一日中デスクの前という日もざらにあります。 ドライアイ、肩こり、腰痛などの事務仕事特有の職業病は覚悟した方がよいです。

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